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横浜地方裁判所 昭和59年(ワ)808号 判決 1989年2月08日

原告 浄瀧寺再建復興会

右代表者 遠藤日乾

右訴訟代理人弁護士 入山実

同 内田博

被告 水林随正

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 浜勝之

同 渡辺利之

同 小林俊行

主文

一  原告の訴をいずれも却下する。

二  訴訟費用は遠藤日乾の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、別紙物件目録記載(一)及び(二)の建物を明け渡せ。

2  被告水林随正は、原告に対し、別紙物件目録記載(三)の建物を明け渡せ。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

1  本案前の答弁

主文同旨

2  本案の答弁

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1(一)  訴外宗教法人浄瀧寺(以下「浄瀧寺」という。)は、原告の肩書地において、鎌倉時代に設立された日蓮宗の寺院であるが、昭和二〇年五月戦災によりその本堂が焼失した。

(二) 浄瀧寺の住職であった訴外遠藤宣徳(以下「宣徳」という。)は、昭和二七年九月原告代表者遠藤日乾(当時の名は宣耀、以下「日乾」という。)、浄瀧寺の壇徒総代及びその他の主だった壇徒らと相談のうえ、浄瀧寺の再建復興を目的として、浄瀧寺とは別個の団体として原告を結成した。

(三) そして、原告は、宣徳を会長、日乾を副会長とし、浄瀧寺の包括宗教団体である日蓮宗の規制に制約されずに、浄瀧寺の本堂建築等の活動を行うことを目的として結成された団体で、浄瀧寺の壇徒から本堂等の建築資金として寄付金を募り、原告の名義で右建築工事に関する請負契約を締結し、本堂等が完成した後にそれらを浄瀧寺に寄進することをその事業とするもので、日乾を中心に活動してきた。

(四) したがって、原告は、代表者の定めのある権利能力なき社団であって、民事訴訟法四六条にいう団体にあたり、当事者能力を有する。

2(一)  宣徳は、昭和二九年八月二三日原告を代表して、訴外鈴木忠一(以下「鈴木」という。)に対し、浄瀧寺の本堂である別紙物件目録記載(一)の建物(以下「本件(一)の建物」という。)の建築工事を工事代金三九五万円で請け負わせる旨の契約(以下「本件請負契約」という。)を締結した。

(二) 鈴木は、遅くとも昭和三一年一一月ごろ本件(一)の建物を完成し、原告に対し右建物を引き渡したから、原告は、そのころ右建物の所有権を取得した。

(三) 被告水林隨正(以下「被告隨正」という。)は、既存の建物である本件(一)の建物に附加して、これと一体をなすようにして昭和五一年六月三〇日ごろ別紙物件目録記載(二)の建物(以下「本件(二)の建物」という。)を、昭和五七年九月一四日ごろ別紙物件目録記載(三)の建物(以下「本件(三)の建物」という。)を、それぞれ増築したから、本件(二)、(三)の建物の所有権は、附合の法理により、既存の建物の所有者である原告に帰属した。

3  被告隨正は、本件(一)ないし(三)の建物を占有し、被告水林上嚴(以下「被告上嚴」というは。)は、本件(一)、(二)の建物を占有している。

よって、原告は、所有権に基づき、被告隨正に対し、本件(一)ないし(三)の建物の明渡しを求め、被告上嚴に対し、本件(一)、(二)の建物の明渡を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1(一)は認める。同1(二)の事実のうち、宣徳が浄瀧寺の住職であったことは認めるが、その余の点は不知。同1(三)の事実は不知。同1(四)は争う。

2  同2(一)、(二)の事実は否認する。同2(三)の事実のうち、本件(二)、(三)の建物が本件(一)の建物に附合したことは否認するが、その余の点は認める。

なお、原告主張の日に、鈴木と請負契約を締結し、本件(一)の建物の引渡を受けたのは、原告ではなく、浄瀧寺である。

3  同3の事実は否認する。

三  被告の主張

仮に原告が団体として存在したとしても、原告は、その主張するような権利能力なき社団といえる実体がなく、当事者能力を有しないものである。

すなわち、権利能力なき社団といいうるためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない(最高裁昭和三九年一〇月一五日第一小法廷判決・民集一八巻八号一六七一頁参照)ところ、原告は、浄瀧寺の本堂(本件(一)の建物)の再建資金を調達するために、浄瀧寺に付属して一時的に設けられた募金機関にすぎず、右権利能力なき社団としての要件を欠くものである。したがって、本訴は不適法として却下を免れない。

第三証拠《省略》

理由

一  原告は、代表者の定めのある権利能力なき社団として当事者能力を有する団体である旨主張し、被告らはこれを争うので、判断する。

1  まず、原告の結成及びその後の経過について検討する。《証拠省略》を総合すれば、次の事実が認められる。

(一)  浄瀧寺の本堂は、昭和二〇年五月戦災により焼失したところ、昭和二七年ごろ浄瀧寺の住職であった宣徳らは、右本堂の再建を計画し、壇徒に対し、右再建計画について協力を依頼していた。

(二)  かくて、原告は、昭和二七年九月浄瀧寺の復興、護持、寺族の保護を図ることを目的として、事務所を横浜市神奈川区幸ヶ谷四四番地宣徳方に置き、浄瀧寺の壇徒のうち、原告結成の趣旨に賛同して寄付をした者を構成員として結成されるに至った。

(三)  原告は、役員として、会長一名、副会長一名、委員若干名を置き、会長が役員会を招集することとし、初代会長に宣徳、副会長に日乾、委員総代に犬山銀治郎がそれぞれ就任した。

(四)  原告は、右のような目的、事務所、役員、役員会等に関する記載をした会則を作成し、昭和二七年九月一日から施行するものとした。

(五)  しかし、原告は、その構成員、内部における意思決定、外部に対する代表、その他の業務執行等に関する定めがない。また、原告は、総会等の構成員の意思表明機関を具備せず、右会則が施行された昭和二七年九月一日以降に総会等が開催されたことがなく、更に、右会則の制定についても総会等が開催されたことがない。

(六)  原告の運営については、当初会長であった宣徳がこれに当たり、同人の死亡後は、副会長である日乾がこれに当たり、総会が開催されたことはなく、役員会が開催されたことも明らかでない。

(七)  原告は、固有の財産がなく、その財産の管理に関する事項の定めがなく、構成員からの寄付等の収入については、会計を兼務する日乾らが管理していた。

以上の事実が認められ(る。)《証拠判断省略》

2  そこで、原告の性格について検討する。

元来、法人格のない社団といいうるためには、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体が存在し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定されるものでなければならない(最高裁判所昭和三九年一〇月一五日第一小法廷判決・民集一八巻八号一六七一頁参照)。

そして、これを本件についてみるのに、前記認定事実によれば、原告は、その意思決定について多数決の原則が行われていたものとはいえず、また、団体としての組織の主要な点が会則はもとより、その運営の実際においても確定していたものとはいえず、更に、その構成員の資格、範囲が明確でなく、その財産的基礎もないものと認めるのが相当である。

以上述べたところによれば、原告は、本件(一)の建物の建築資金の調達を主たる目的として、浄瀧寺に付属して結成された募金機関としての性格を有する団体であって、結局、民事訴訟法四六条所定の法人にあらざる社団又は財団に当たらないものというべきである。したがって、原告は、当事者能力を有しないものといわなければならない。

二  以上の次第であるから、原告の本件訴は、本案の当否について判断するまでもなく、不適法として却下を免れないから、訴訟費用の負担について民事訴訟法九九条を準用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤榮一 裁判官 荒井九洲雄 岸日出夫)

<以下省略>

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